祖父恋 26・施餓鬼会②あんずちゃん、行かないで!
京介くんと一緒に大きな木の側で待っていると、多喜子さんと並木くんがお化け屋敷から出てきた。
並木くんは真っ青な顔をしていた。やっぱり相当すごかったのかな?
「大丈夫?なんか顔色悪いぞ。」すぐに気付いた京介くんが声をかけた。
「あ、ああ・・・なんとかな。」そう答える並木くんだったけど、全身びっしょり冷や汗をかいているのがわかる。
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京介くんと一緒に大きな木の側で待っていると、多喜子さんと並木くんがお化け屋敷から出てきた。
並木くんは真っ青な顔をしていた。やっぱり相当すごかったのかな?
「大丈夫?なんか顔色悪いぞ。」すぐに気付いた京介くんが声をかけた。
「あ、ああ・・・なんとかな。」そう答える並木くんだったけど、全身びっしょり冷や汗をかいているのがわかる。
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瞬く間に日は過ぎて・・・・とうとう施餓鬼会の日がやってきた。私は鶴代さんが用意してくれた紺地に白いあやめの模様の浴衣を着せてもらい、真っ赤な帯をしめた。髪の毛は自分で三つ編みにして、アップにした。
「京介、ちょっと見てごらんよ。あんずちゃん、綺麗だろ?」ふいに鶴代さんに呼ばれた京介くんは、私の顔をよく見もせずに「外で待ってるぞ」と言って、玄関に消えた。京介くんは白いカッターシャツに下は黒い学生ズボンで私がいつも見慣れた京介くんの格好をしていた。
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並木くんと多喜子さんとの微笑ましいようなラブラブぶりを目の当たりにした私は・・・・「よかったね」と思う反面、一体この二人はいつまで続くのかなあと少しだけ心配になったりした。
だって多喜子さんが私の未来の祖母である以上、いつか京介くんとくっつくのだと思うから。にしても・・・京介くんも多喜子さんにはあまり興味のあるそぶりを見せない。いや、ほとんどと言っていいくらい。
でもそれは仕方ない。京介くんは今は孫とは露ほども知らない、私のことを好きでいてくれているのだから。私の方は・・・おじいちゃんと知りつつも、京介くんのまっすぐで嘘の一つもつけない、クリアで澄み渡った空のようなところに惹かれていた。
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海水浴から戻ると、また普段と変わらない夏休みの生活に戻っていた。京介くんは相変わらず毎朝ランニングをして、陸上部の練習のある時には学校に出かけて行った。
私は真美子ちゃんと遊んだり、ポチの散歩に行ったり、鶴代さんの家事の手伝いをしたりしてた。そんなある日、午前中の練習を終えた京介くんが、波木くんに図書館に誘われているので、私に一緒に来るようにと言ってきた。
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夕方になった。大宅先輩も状態が落ち着いたので、家に帰ることになった。みんな口数は少なかった。大宅先輩は始終うつむき加減だった。
船の甲板から綺麗な夕日が見えた。こんなに綺麗な夕日なのに・・・私はなぜかものすごく悲しい気持ちでいっぱいだった。この言いようのない悲しい気持ちは、人工呼吸のことではなかった。・・・そう思う。
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ボートから海に落ちた大宅先輩はすぐに京介くんによって助けられた。けれども、大量の水を飲んでいたせいだろう・・・ボートが大急ぎで浜辺に戻ってきた時には、彼女は意識がなかった。京介くんが大宅先輩を抱き上げて、砂の上にそっと寝かせた。彼女の顔は真っ青で、唇は紫色だった。
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京介くんと私はまだ岩場にいた。もうそろそろ浜辺に向かって帰らなければ・・・。みんなが心配するだろう。京介くんは私に「手を離して・・・おねがい」と言われて、手は離していた。でもずっとこっちを見ていた。
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「じゃあ、行くぞー!よーい、スタート!!!」世話好き陸上部センパイが掛け声をかける。
私たちはお腹くらいの水深からスタートした・・・・・。水が綺麗・・・。
私は正直言って、京介くんがどの位泳げるのかということは全く知らない。でも、負けたくなかった。
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船酔いとの戦いはトイレで終わった。はあ・・・。なんとかピンチを脱出し太郎島にたどり着く事が出来た。よかった~。船から降りると・・・もうそこはすぐ海水浴場になっていた。砂浜にゴミは一つも落ちていないし、海の水が深いグリーンなのに、澄んでいる。すごく綺麗な海水浴場・・・と言うよりは島だった。
「うわあ、きれいな海だね」多喜子さんは感激していた。真美子ちゃんも辺りをきょろきょろ見回していた。ポチは・・・・?ポチは普段どおりとことこ歩いていた。
「ごめん」私は手を合わせて自分の顔の前に持っていき、京介くんに小さい声で謝った。
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太郎島に行くにはバスに30分乗って、さらにバスの終点から小さい船に乗って、島に渡るのだと聞いた。船かあ・・・・私は大切なお弁当の入ったバッグをぎゅっと握り締めた。大丈夫かなあ・・・実は船酔いするんだなあ。薬は持ってない。ちょっと心配だった。
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とうとう1学期の終業式も終わり・・・海水浴に行く日がやって来た。あの神社で話した日以来、私は京介くんとまともに、ちゃんと目を見て話せるようになった。
私はもう逃げない・・・そう誓った。どのみち、私はもうすぐ「現代」に帰らなければならない。それなら一瞬、一秒でも大切にしたい・・・。
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「バカってなんだよ?」京介くんが振り返った。
私は思わず、2,3歩後ろに下がった。聞こえてたんだ。あ・・・・当たり前か。叫んでたからなあ。
「バカって誰だよ?」京介くんがタッタッタと小走りで戻って来た。
あっ、ほっぺたに大きな蚊が止まっている。私はいつもの癖で思わず、反射的に京介くんのほっぺたの「蚊」を叩いてしまった。
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私は家に戻った。下の和室で鶴代さんと話していたら、しばらくして京介くんも家に戻ってきた。今日は随分早いんだ。
「あら、京介、おかえりぃ」鶴代さんが言った。
京介くんは「ただいま」とだけ言って2階に上がってしまった。私の方は全く見ていない。何か怒っているみたいだった。
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海水浴までとうとう1週間を切ってしまった。でも私はポチの「夏休みが終わる前に現代に帰りましょう」という言葉に戸惑って・・・・そして落ち込んだ。なんで・・・?そう、自分でもなんでだろうって思う。でも、正直もう少しだけこのままここにいさせてって、思う。
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やっと梅雨が明け、夏休みはもう目前だった。高校は休み前で短縮授業になっていた。京介じいは陸上の練習に熱心だった。でもこの暑さでは練習もきついだろうな・・・・。並木くんもまた黙々と練習していた。ああ、並木くんかあ・・・こんなに暑くても髪の毛でいつも顔半分は隠れていた。???なんでかなあ・・・・。今度機会があったら本人に聞いてみようかな。
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海水浴に行く日程が決まった。メンバーは・・・京介じい、並木くん、陸上部の先輩(男子二人)、女子は大宅先輩に先輩の友人と私、島田多喜子さんの合計8人になった。多喜子さんは私が無理矢理誘ったのだった。声をかけるまでは緊張したんだけど、案外すんなりオッケーしてくれた。
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期末試験は無事に終わった。私の成績は人生で初めてというくらいよかった。だからちょっと京介くん=おじいちゃんにも驚かれてしまった。
クラスの雰囲気にも徐々に慣れて来たし、学校生活は順調だった。多喜子さんと私はつかず離れずの関係でただのクラスメートという一定の距離を保っていた。ただ・・・・・私は多喜子さんとおじいちゃんはいつか「くっつく」のだろうかと期待をもって眺めているのだけど、全くそういう気配は感じられなかった。
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きゃあーーっ。 こんな偶然嬉しいけど、今は並木くんの顔を見ると動揺するかもしれない。 そう、今の私には恋愛はご法度なのよ。そう・・・・そうなの。
なんでまたこんなところへ並木くんが現れるのよ・・・・。そう、実はこのブラック・ジャックみたいな並木くんは京介くん=おじいちゃんの友達だったんだ。私の正面にわざわざ座ったというわけではなく、ただ単に京介くんの隣に座ったのだった。
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七夕の日になった。学校にも少しだけ慣れて期末試験が始まっていた。私は本当は高校2年生なので勉強にはほとんど苦労はしなかった。学校から帰るとまだ午後の早い時間だったので、今日こそポチとゆっくりしゃべりたくて、庭に出てみた。
せっかくの七夕なのに、空にはねずみ色の雲が重く広がっていて、いつ夕立がきてもおかしくないような状況だった。
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多喜子・・・そう、私のおばあちゃんの名前も多喜子だった。でも・・・・私のおばあちゃんがこんなに美少女だったのだろうか。私の頭の中では大きな「ハテナマーク」が踊っていた。おじいちゃんとおばあちゃんは高校の同級生だったの?でもそんな話誰からも聞いたことないし。
教室には机と椅子がびっしり並んでいた。男子と女子が半々くらいだろうか、いや男子の方が若干多めかもしれない。京介くん=おじいちゃんが窓際の席からこっちを見ていた。おじいちゃんはこんなに大勢のクラスメイトの中でも結構目立っていた・・・。
その時・・・教室の一点に私の目が釘付けになった。
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結局その日はポチと話らしい話はできなかった。家に戻った私たちはお夕飯を頂き、後片付けを手伝って、お風呂に入り、眠った。ただこの日一つ特筆しておくべきことといえば、夕方私たちが家に戻ると、おじいちゃんの祖母にあたる小さいおばあさんが仕事から帰ったとかで家にいた事、そして、おじいちゃんのお父さんである・・名前を忘れてしまったけど・・おじさんが家にいたことだった。
ちょっと整理しないと頭がこんがらがってしまうので、それはまた明日考えよう。そうそう、明日からいよいよ私はおじいちゃん・・・・京介くんの学校に通うことになっていた。ええい、今日はもう寝てしまおう。
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階段を駆け下りようとした時、私の体が宙に舞った気がした。次の瞬間、ドシンッ。いててててっ。お尻から下に落ちていた。
「おい、あんこ大丈夫か?」京介くんが心配して駆け下りて来た。そう、なぜかこの時から私の中でおじいちゃんは京介くんになっていたのです。
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もうすぐ誕生日という事で…物好き、もといっ優しい幼馴染みがえびめしの素を送ってくれました。
私が以前話してたのを覚えてくれてたんやっ。
作ってみたけど…黒い!
この味は家で出せるのか?
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「こんにちはぁ」私は勢いよく宮田家の玄関から上にあがり、奥の和室に入った。おじいちゃんはさっさと2階に上がってしまったようだった。
わあーーなんかレトロだわあ・・・。柱時計はまるで「大きなのっぽの古時計」だし、テレビには足が付いていた。畳の上には円いちゃぶ台っていうのかなあ・・・かなり大きめのものがあった。ものすごーく懐かしいようなこの部屋に見とれていると、女の子の声がした。
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ちょっと、ポチったら・・・・なんとかしてよっ。連れてきたのはあんたでしょう?それにこの少年がおじいちゃん?
私の中でおしゃれなロマンスグレーの優しいおじいちゃんのイメージがガラガラと音を立てて崩れていくのがわかった。
ポチは困っている私の顔を見て、またなにやら呪文を唱えた。ワオーーン、ワオォーン・・・
・・ワウッ・・・ワウ・・キュンキュン・・・まるで人を恋しがっている時の吠え方みたいだった。
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私はポチの言う通り、おじいちゃんの家の2階にある本がいっぱいの書斎に入った。ママや伯母さん達はみんなおじいちゃんの傍についているから誰も私たちに気付いた人はいなかった。
「あんず、いいですか?時空を超える時はきっとものすごくくすぐったいと感じますよ、大丈夫ですか?あんずはかなりくすぐったがりでしょう?」
「え?ポチ、そんなことまでよく知ってるね。そう、私ものすごくくすぐったがりだけど・・・ううーーーん、でもおじいちゃんにまた会えるなら・・・・我慢する」
「じゃあ・・・・・ちゃんとワタシにつかまってください」
って言うか、ポチの身体にはつかまれないっしょ・・・だって小さいんだもん。私がポチを抱っこする形になった。
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