祖父恋 13・元気もらった
海水浴までとうとう1週間を切ってしまった。でも私はポチの「夏休みが終わる前に現代に帰りましょう」という言葉に戸惑って・・・・そして落ち込んだ。なんで・・・?そう、自分でもなんでだろうって思う。でも、正直もう少しだけこのままここにいさせてって、思う。
☆
みんなで海水浴に行く話が決まってから、京介くんや並木くんの昔を知ってる人・・・大宅先輩はすごく嬉しそうで・・・そして、輝いて見えた。それは部活でお茶を立てているときにもよくわかった。先輩の横顔は恋をしている人の横顔だった。恋をしている人の横顔ってどんな顔・・・・それは、瞳が大きく潤んでいて、睫毛もちょっと濡れたような感じ。唇もなんにもつけなくても(当時はリップクリームとかグロスはまだ一般的ではなかったから)ぷるぷるした感じ。頬はばら色に染まっている・・・・そんな感じ。
それに比べて自分はどうだ。心がざわついていた。京介くんの顔を見るとなんか辛いので、家でも食事の時以外はあまり会わないようにしていた。って言うか私が逃げていたと思う。幸い陸上部は朝の練習があったので、京介くんは7時過ぎには家を出ていた。だから学校で会うのは授業の時だった。
自分でもこんなのは嫌だ。嫌だけど・・・どうしようもない。そんなことを思いながら、とぼとぼと理科室に向かって廊下を歩いていたら、前方に大宅先輩の姿が見えた。大宅先輩が京介くんに何やら話しかけていた。京介くんも頭をちょっと下げて、会釈をしてちょっぴり嬉しそうに先輩と話している。なんか見たくなかったなあ。
「京介君、じゃあ、また・・・。あっ、あんずちゃん!」この間から急にあんずちゃんと呼ばれるようになった。二人の横をさりげなく通り過ぎようとしたら大宅先輩に見つかってしまった。
「こ、こんにちは。先輩」
「あのね、京介君とね、来週の海水浴の件で話てたのよ。バスの時刻とか・・電車の時刻とか・・ね」
「そうですか。ありがとうございます・・・・私あんまりわかんなくて、すみません」
「あんずちゃんが謝らなくてもいいのよ。私、あんずちゃんのおかげでちょっと勇気が出てね。京介君とまた話せるようになったんだあ」先輩はすっごく嬉しそうに頬を染めながら話してくれた。・・・・・私は余計に落ち込んだ。
「よかったですね、先輩」私は無理に笑顔を作って挨拶すると、理科室に急いだ。そのやり取りをちょっと離れたところで見ていた人がいた。並木くんだった。
☆
「おい、あんこっ・・・」
学校で京介くんが話し掛けて来たけど、私はトイレに行くからと・・・また逃げてしまった。そしてまたそのことを後悔した。はあーーー。ため息が出た。こんなことしてたらダメだよね。
「どうしたの?なんか元気ないでしょ?」トイレで手を洗っていると、島田多喜子さんに話し掛けられた。相変わらず美少女だった。でもその言葉にちょっと驚いた。私のこと、見てくれてるんだ?
「そんなことないよ。ちょっと・・・」
「ちょっと、なに?」この人、ストレート。
「なんでもないよ」
「そう?まあそれならいいけど。来週でしょ?海水浴。楽しみにしてるからね。私、転校して来て、こっちの海って初めてなんだあ」へえ・・・そうなんだ。楽しそうに話す多喜子さんに私はちょっぴり元気をもらった。ついでに聞いてみたくなった。
「あの、島田さん・・・泳ぐの好き?」
「なんで?泳ぐのは大好きよ。ふふふ・・・実はねえ、私かっぱみたいに泳げるのよ。その辺の男子には負けないんだから」多喜子さんは笑った。ふええーーーそうなんだ。この祖母にして、この孫あり?多喜子さん(未来の私の祖母。多分)もやっぱり泳ぐのが好きだったんだね。
「ねえねえ、じゃあさ・・・水泳の話しようよ」多喜子さんが笑いながら、私の手を引っ張って、トイレから出た。さっきまで、激しく落ち込んでいたけど・・・だいぶ元気が出てきた。
☆
放課後になった。恐らく部活に向かう京介くんを遠目に見ながら、私は家に帰ろうとしていた。坂道を少し下りたところで、声をかけられた。・・・・並木くんだった。
「時田さん、もう帰るの?」
「うん、何か私に御用でしょうか?」
「ははは。じゃあ、外走りながらちょっと話そうか」並木くんはランニングの途中らしかった。いいのだろうか?いや、彼がそう言うのだからきっといいのだろうけど。
「最近、元気?」
「なんで?」
「だって・・・・いつもの明るさが。なんか面白い雰囲気が出てないぞ」
「ええ?そうですか?私ってそんなに変でしょうか?」
「変とは言ってないけど」並木くんはちょっと笑った。
「宮田のとこはどう?」
「どうって?どういう意味?」
「いや・・・。俺さ、あいつとはほんと付き合い長いから。なんか最近あいつも様子が変だし。家の中でなんかあったかなと思ってね」
「そうだったんだ。でも別に何も無いと思う」
「そっか・・・ああ、そう言えばさあポチは元気?」
「え?ポチを知ってるの?」
「もちろん!ポチは俺たちが小学生の時、道端でうずくまってたのを見つけてね。まだ生まれてそんなに経ってなかったと思うけど・・・・それで、宮田が自分が飼う・・・って。家の人を説得したんだ」
「へえ、そうだったの」なんかおじいちゃんらしいな。きっと放って置けなかったんだろうなあ。不思議と心が温かくなるような気がした。
「並木くん・・・・ありがとう。貴重な話」
「そう?でも、時田さん・・・・笑ったほうがいいよ。じゃあね。俺、ランニングの途中だから」並木くんにも元気をもらった。今日はいろんな人に元気をもらう日だな。並木くんと二人でこんなに話したのは初めてだった。でもなんかすごーく安心感のある人だなあと思った。
つづく
作者より;真夜中にバババ-と書いて、アップしたのでちょこっと加筆修正しました。あんずちゃんの悩みがほんの少しでも、みなさんに伝わると嬉しいのですけど・・・。そう、今回は事件は起こらず、ちょっと緩やかに・・・・DVDで言えば早送りされてしまうような場面でしたね。まあ、そんなんもありか・・・・。
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コメント
短い時間なのに、あんずちゃんしっかりお友達作ってますね。
まあ、京介君と多喜子さんの孫やし。
しかし、並木君、もっとクールで無愛想かと思ってました。
。
あっちから話しかけてくれるなんて、ええ子や…。
グッときますね
友達っていいな。
投稿: みわっち | 2009年7月12日 (日) 10時46分
>みわっちさん
おはようございます~!!コメントありがとうございます~ヽ(´▽`)/並木君、無愛想にしたかったんだけど・・・できなかった。クールな方が盛り上がったかも・・でも描けなかった~京介くんと違いはあるんかあ????って感じで、物語は進んで参りますよ。
違いはあります!多分これから・・。
そうそう、私もうほとんど下書きなくて、夜中にバババと書いて、アップしちゃたんで、ちょっと書き直したりしてます。いつもありがとうございます!!
投稿: 美月 | 2009年7月12日 (日) 11時06分
並木君、良いではないですか。気さくで。
感じのいい子ですねっ!
フフフ…美月さん。
河童の様に泳げる子出現率高いですねっ!(たしか綾ちゃんも)
Σ( ゜Д゜)ハッ!
もしやっ!!
美月さんはかっぱだとかっっ!!??
投稿: あかつき涼 | 2009年7月12日 (日) 20時01分
「なんか面白い雰囲気」ってさ
やっぱ、普通にしてても未来から来た分
この時代だと「天然キャラ」になっちゃうんだろうな。
あっ!もしや…
自分の周りの天然なヤツは…
未来人っ?
投稿: 大田分 | 2009年7月12日 (日) 22時00分
何も言わないのに気づいてくれるって、すごくうれしいですよね。

その上、元気もくれて。
なんていい人たちっ(。>0<。)
でもそれは、あんずちゃんの人柄がやっぱりそうさせるんでしょうね
ほんわかといい気持ちで読み終えました
投稿: 百瀬朝海 | 2009年7月12日 (日) 22時47分
>あかつき 涼さんへ
あ・・・かっぱ女子ばれてる?実は私、河童なんですよ。知らんかったでしょ?
そうそう、綾もかっぱだったんだあ・・・。
あかつきさんこそ、探偵なんじゃ∑ヾ( ̄0 ̄;ノ
投稿: 美月 | 2009年7月13日 (月) 10時19分
>大田分さんへ
ふっふっふ・・・やっとわかったか。自分の周りには知らないだけで、未来人はいっぱいうろうろしてるんだ。なんてね~怖いねえ、それ。
ただ単に天然なだけでしょう・・ψ(`∇´)ψ
投稿: 美月 | 2009年7月13日 (月) 10時21分
>百瀬朝海さんへ
ありがとうございます!!
そんなふうに前向きに思って、誉めて下さるのは・・゜.+:。(*´v`*)゜.+:。
これから、ちょっと物語も進んでいけるように頑張ります☆し、しかーし、私も夏休みには、超うるさい・・もとい、元気の良い子どもたちを抱えて、毎日書けるんだろうか?自分の時間を持てないことがストレスになっちゃいそうですね
投稿: 美月 | 2009年7月13日 (月) 10時25分