月の雫 第1章 俺のこと・2
モデルをすることになったきっかけ、それは去年の9月のことだった。家にいた俺は突然、裕三叔父さんの電話で呼び出された。確か金曜日の夕方だったと思う。
電話のベルが鳴ったので、出た。
「もしもし」
「おお、薫おってよかったわ。お前今からすぐ出てきてくれ」
「裕三叔父さん?え?どこへ・・・」
「ほら、四条の高倉越えたとこの{ゾーン}ていうスタジオ。頼むわ」
☆
ゾーン・・・前に一回行ったことがある・・・小さいスタジオ。
「今から?なんで?」
「すまんっ。助けてくれ。・・・・今はゆっくり説明できひんにゃわ。急ぎやねん・・・とにかく来てくれ」
まあ、なんと人騒がせな。今からどんなに急いでも四条までは京阪電車で20分はかかるっちゅうねん。でも叔父さんの声はかなり切羽詰まっているようだった。仕方ない。行くか・・・・。
・
四条のスタジオ「ゾーン」に着いた。エレベーターに乗って6階まで行くと、そこはライトが明るいスタジオだった。
「おおっ、薫よう来てくれたわ、こっちこっち・・・」叔父さんに促されて、スタジオに入る。なんでも今日撮影するはずだったモデルの一人がインフルエンザらしく、40℃の高熱で参加できないらしい。男性モデルがあと一人足りないので、薫が急遽呼ばれたという訳だった・・・・。
(他に代わりはいるだろうに・・・・)一瞬そう思ったが、ヘアメイクさんに呼ばれ、奥で支度をした。この時、初めて俺にヘアメイクをしてくれたのが、あかねさんだった。 あかねさん・・・・。俺は女の人に髪の毛を触られるのには全く慣れていなかったので、妙に緊張したのを昨日のことのように覚えている。あかねさんから漂ってくる不思議な香り・・・なんの香りかはよくわからないけど・・・それにもちょっとドキドキした。
・
撮影はやってみると結構面白い。小さい頃から裕三叔父さんには写真をたくさん撮ってもらっていたので、全然緊張せずに無事に終了した。
「えーー、君、裕三さんの甥っ子?16歳って?見えへん、見えへん。だって落ち着いてるもん」
「あはは・・・そうですか?」俺は笑った。
「でも、君、なかなかいい素材やと思うわ。もうちょっとやってみたら?」こう言ってくれる人もいた。この時からこのバイトを続けることになった。
モデルと言っても種類は色々ある。俺の場合は京都という土地柄もあって、和装のモデルだった。呉服屋さんのポスターとか・・・成人式用に振袖の女の子と一緒に並んで写っている広告とか、まあそんな感じ。だから特にこのバイトで顔が売れて困るとかそういうことはなかった。トラブルもなかった。
親父にもバイトのことはきちんと話した。親父は特に何も言わない。それは裕三叔父さんがついているというのもあると思うけど、親父は俺が小さい頃から、何でも自分でやりたいことはやってみろという人で、人に迷惑をかけない限りは何でも自由にさせてくれた。
そういう親父の教育方針には感謝している。
さっきトラブルはなかったと言ったけど、ちょっと怖い思いをしたことはあった。そのことが、俺が顔を隠していることにも関係しているかな。
つづく
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コメント
なるほど。
落ち着いてるんや。彼。
気になるところで次回ですねっ(笑)
四条高倉か・・・・。
何かそこに美月さん的に思い出がある、とか?
ストーリーとともに、京都の町並みが気になりますっ
投稿: あかつき涼 | 2009年11月 2日 (月) 12時46分
>あかつき涼さま
四条高倉は適当につけてしまいました。えへへ。
うん、まだまだ京都の町並み出てくると思いますー
よろしくお願いしますね
投稿: 美月 | 2009年11月 4日 (水) 14時18分