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八坂物語 5・明日、祇園に行くことになった

借りたものはすぐに返さないと気が済まないので
谷さんから借りた傘は、翌日返した。
本当は直接返したかったが、この日谷さんの姿はなかった。

ビルの3階にある更衣室で服を着替える時に
2階の事務所の中を通る。

谷さんの机はちょうど通り道に面していたので、
仕事をしている時はいつもそこの机に座っている姿が見えた。



姿が見えないので、綾は小さいメモにお礼の言葉を書いて、
椅子の背もたれにかけておいた。

                        ☆

このお土産やにはたくさんのバイト、そして社員がいた。
この物語を語る上で、綾と同い年の三木 早苗の存在は必要不可欠である。


三木 早苗は京都の桂という所の出身で、高校を卒業して
すぐにこのお土産屋に就職した。
その年、この会社に就職したは3人だった。

綾はこの三木 早苗とは同い年ということもあり、すぐに打ち解けた。

そして、この三木 早苗は、この京極の中のお土産物屋で勤務する他に
もう一軒、「祇園福寿」という旅館の担当になっていた。

綾はいつも、彼女を三木ちゃんと呼んでいた。
以下、三木ちゃんと言う。


ある夜のバイト時間のこと。
三木ちゃんが、綾に祇園福寿の話をしていた。


「あのな、こないだな、福寿の大女将(おおおかみ)に
制服がだらしないって注意されてん」


「そうなん?」

福寿の制服は、ここの真っ赤な制服と違い、薄紫のスーツだった。

「制服がだらしないって、どういうこと?」

「ボタンが一個取れててん」

三木ちゃんはケタケタと笑った。



「でもな、ここの旅館厳しいねんでぇ・・・」

「ふうん・・・・三木ちゃんも大変やなあ」





二人で話していたら、ベテラン社員の森田さんに呼ばれた。

「藤川さん、ちょっと来てんか」

「はい」

「ああ、三木さんも」

「はあい」と三木ちゃん。



森田さんというのは、おそらく40歳前後の女性の社員で、
真っ赤な制服に真っ赤な口紅がいつも光っていて、
それに負けずアイライナーも真っ黒だった。

所謂、化粧が濃いというやつだった。

ちょっと香水の香りもきつめで・・・声はタバコとお酒のせいか
かすれていた。普段の話す声もデカイ。




「三木ちゃん、明日福寿やな・・・」

「はい」

「じゃあ、明日は藤川さんも一緒に行ってくれるか」

森田さんの言葉に逆らえるはずもなく、綾は「はい」と返事をした。




「なあ、三木ちゃん・・・大丈夫かな?わたし」

「大丈夫、大丈夫。うちがいろいろ教えてあげる。
ただ、大女将は挨拶にはうるさいから、行ったらまず挨拶に行くねんで」

「うん。わかった」


こうして、綾は三木ちゃんと祇園に行くことになった。



 

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