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八坂物語 19・あなたの方が下品

それからしばらくの間、綾は佐藤さんを見かけなかった。


ある日、綾が和菓子のレジに入っていると、社員の森田さんに呼ばれた。


「ちょっとええか?」

「はい」

その日も真っ赤な口紅がぎらぎらと輝いて見えた。

                        ☆

森田さんに2階の事務所に来るように言われたので
階段を上っていると、谷さんが上からゆっくりと下りて来た。



「ああ、藤川くん・・・元気やったか?」

「はい、師匠」

綾は笑顔で答えた。

「そうか、そらよかった。また五条手伝うてや」

「はい、喜んでっ」


谷さんとにこやかに会話していると森田さんの声がした。




「藤川さんっ」


「はい・・・すみません」

「急ですまんけどな、今日はちょっと祇園店に行ってくれるか?
どうしても人が足らんとかで、今向こうの店長から電話あってな。

今日はこっち、社員も少ないし・・・
藤川さんにお願いしたいなと思てな」


「分かりました。祇園店はあの・・・四条通の・・・」

「そうそう。左側のとこな。タクシーで行ってくれたらええよ」



「はい」

「ほな、頼むさかいな」

綾は頭を下げて、急いで行こうとした。

「ちょっと待って」

それを森田さんに止められた。





「佐藤さんな・・・ここ辞めたよ」

「え?」


綾は全く知らなかった。



森田さんはニヤっとちょっとやらしいような笑いを浮かべた。

そして、綾にグッと近づいて、小さな声で言った。




「あの子、いかがわしいことしてたさかいな。

店長とこっそり付き合うてたんや。

それで、お金もろてたって言うんやからな・・・・ああ・・・下品やわあ」


森田さんはわざとらしく言った。




「あなたの方が余程下品です」


のど元まで出かかった・・・・それでも、綾は飲み込んだ。




「失礼します」

ぺこりと頭を下げると、綾は祇園店に向かった。


タクシーには乗らず、四条通を走った。


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