« 八坂物語 21・身に迫る危険 | トップページ | もうすぐ今年も終わりますね »

八坂物語 22・君は時々無防備過ぎる

何とかして掴まれた腕を振りほどこうとしたが、

男性の力は強くて、どうすることも出来ない。

店長は腕を掴んだまま、面白がっているようにも見えた。


「やめてくださいっ」

きっぱりと言ってみたが・・・・店長は笑った。

「余計にそそられるんだよ、そういう事言われるとね」

                       ☆

ああ、もうっ・・・駄目だ、この人ちょっとおかしい。


それから、店長の顔が綾の顔に近づいて来た。



「やだっ」


咄嗟に顔を横へ背けたので唇を奪われるのは免れた・・・・。



でも、この男は執拗に綾の唇を捕まえようとする。


持っていたお茶のペットボトルは床に落ちて
ガシャンと音を立てた。

ついに店長は綾の両腕を捉えた。



綾は今度は反対側に首を背けた。



「いいねえ・・・いいねえ・・・もっと抵抗しなよ」





綾にはよくわからなかったが、こういう場合はこれ以上抵抗しない方が
いいのかもしれないと思い、今度は真っすぐに店長を睨んだ。



「お、君はそんな顔もするんだね。・・・・・ふふっ、そそられるねえ」



ガチャ・・・








その時事務室の扉が開いた。






 

「山口くん・・・やめとき、そこまでや」


え・・・その声は・・・・・・・・






まさかの・・・・・谷さん。



「谷さんっ」綾は思わず名前を呼んだ。




「谷主任、どうしてここに来られたんですか?」

さっきまで綾に迫っていた山口店長はバツが悪そうに
言った。


「うちの森田から聞いたんですよ、藤川くんを応援に行かせたとね。

そやけど、今日は藤川くんは五条に来てもらうことになっとったんや。

こっちも困るさかいな・・・・・迎えに来たんや」

「そうだったんですか。それならどうぞ・・・連れて行ってください」

店長は綾の方を全く見ようともせず、吐き捨てるように言った。





「ほな・・・そうするわ。さあ・・・行こか」

谷さんはきっぱりとそう言うと、綾を連れて祇園店を出た。



                        ・

                        ・

                        ・

谷さんは何も言わずに歩いて、停めてあった自分の白い軽乗るように言った。

「危なかったな・・・」



綾は黙って頷いた。



谷さんの車の後部座席に乗せてもらって安心したのか
全身の力が抜けるような気がした。


「大丈夫か?」


「・・・・はい」




「あのな・・・四条店から祇園店に手伝いに行くなんて事は
めったにないことなんや。

それで、森田さんに聞いたんや。

そしたら、山口店長が藤川さんをぜひ来させて欲しいと
たっての希望で・・・・と聞いてな。

気になって寄ってみたんや。

今日五条に来ることになってたいうんは嘘やけどな」



「ありがとうございます」

綾は小さな声で言った。




「あの店長は前にもこういう事があってな。
女の子にひどい事してな。

バイトの女の子ショックで辞めてしもたんや。
ほんまに困ったもんやわ」




「そうでしたか・・・・」




谷さんはスーパーマンみたいですね・・・・

どうしていつもそんなに私に優しくしてくれるんですか?


綾は心の中で言った。

その声が谷さんに届くことはないと分かっていた。





「ほっとけへんねんや・・・君。危なっかしくて」


谷さんは優しく言った。



「今日はもう帰り・・・そやけど、気いつけるんやで。

もう祇園店には行ったらあかん。
 

君は時々無防備過ぎるで」



無防備?








 

|

« 八坂物語 21・身に迫る危険 | トップページ | もうすぐ今年も終わりますね »

八坂物語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/401181/58341927

この記事へのトラックバック一覧です: 八坂物語 22・君は時々無防備過ぎる:

« 八坂物語 21・身に迫る危険 | トップページ | もうすぐ今年も終わりますね »