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八坂物語 23・お土産屋を辞める日

あれから綾は谷さんに言われた「無防備」の意味を自分なりに考えていた。

考えていたけれど、あまりよくわからなかった。


京都に祇園祭のお囃子の音が聞こえるようになった・・・

綾は祇園祭が終われば、このお土産物屋を辞めることになっていた。

                        ☆

「藤川くん・・・」

土産物の品を補充するために、事務所の横を通ると、
谷さんに呼び止められた。

「今日のお昼ちょっと時間あるか?」

周りには誰もいなかった。

「はい」


           
             



                         ・

                         ・

昼になり、綾は遅めの休憩を取ろうと店を出ると、
すぐ隣の店の前に谷さんが立っているのが見えた。


「お疲れさん」

谷さんは涼しい顔をしながら、そう言った。

でもその見なれた涼しい顔の中にも、かすかな親しみを感じるようになっていた
綾だった。

特別なことは何もない。


あるはずもなかったけれど。






「このすぐ先にスター食堂っていうのがあるねんけど・・・・行ったことあるか?」

「ないです」


「ほんなら、スター食堂に行こうか」



スター食堂というのは、昭和の香りの漂う小さい食堂だった。

広くない店内には、サラリーマンらしき人が数人いた。

誰も綾と谷さんの事を気にする気配もなかった。




「さあ、どうぞ」

谷さんは一番奥の机に座った。



「君、何にする?・・・僕のオススメは親子丼や」

少し得意げに語る谷さんを楽しそうに眺めながら、

「親子丼にします」綾は言った。



とても美味しかった・・・・。



食事が終わると谷さんは聞いた。


「コーヒー飲めるか?」



食堂のおばちゃんがコーヒーを運んで来た。

「藤川くん、もうすぐ店辞めるんやってな・・・」

「・・・・はい」


そっか・・・多分三木ちゃんが谷さんに話したんだろうな・・・綾は思った。


先週社員さんの飲み会があると言っていた。


「祇園祭の時は店入ってくれるんやろ?」

「祇園祭の日は忙しいんですよね?」


「そやで。店も一年で一番忙しいんちゃうかな・・・
僕は宵山の日はずっと五条やけどな。

祇園祭の時は、2年前から宿泊の予約でいっぱいやからな」

「そうなんですか・・・」
祇園祭の日は会えないんだな・・・・

綾は一抹の寂しさを感じた。


「もう休憩終わるな。戻らなあかんな。

今日はご馳走するよ」

谷さんは涼しい顔で言ったが、綾は慌てた。

「駄目です。そんなん、自分で払います」

財布を出した綾を谷さんは遮った。



「ええから」


一緒に店を出た時谷さんは言った。

「祇園祭の山鉾巡行の日・・・僕にくれるか?」

作者より;大変長い間、開いてしまいましたが、八坂物語、もうすぐ終わります。
      今回は綾が18歳ということもあり、恋愛要素はほとんどありませんが^^;
      無事に終わると思います。

        

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