あーあ、たまには休ませて欲しいのに、また小学生の娘がお約束をしてきたと言う。
「お約束」というのは学校が終わってから、お友達の家に遊びに行くことを言う。
「ママ、風邪ひいてしんどいねんから・・・朝もそう言うたやろ」
「でも・・かえでちゃんとDSしたかったんやもん」
娘は全く悪びれずに言う。全く。しかもうちに来るというのだ。
☆
このかえでちゃんという子は三人兄妹の真中で、
幼稚園の頃から知っているが・・・・。
本当に薄気味の悪い子だった。
大人としてこういうことを言うのは絶対にタブーだということを
私は知っている。
だから絶対に顔には出さないし、
家に来ても笑顔で迎えるようにしている。
むしろ、他の娘の友達よりも・・・より優しく・・・・より親切に。
ああ、私ってやっぱり・・・・腹黒い?
でも・・・とにかく薄気味悪いのだ。
もし私が漫画家だったら、必ず似顔絵を描いて
もっとわかりやすく説明できるだろうに。
漫画家ではないので、それは出来ない。
でも・・・・塚田 楓という名前は本当に美しかった。
そして、声も美しい子だ。
一つ下の年子の妹がいて、その子は塚田 椿という。
この椿(つばき)ちゃんはかえでちゃんとは全く顔が違う。
性格も・・・・多分全く違う。
性格は人それぞれだから、違うのは当たり前かと思う。
かえでちゃんは、いつも長い伸ばしっぱなしにしたような
もつれた髪の毛で半分くらいは顔を覆われている。
目は一重・・・・。
そして、こっちが話しかけてもよそを向いてちょっと笑うだけで、
こっちを見ない。
もちろん挨拶もしないし、靴もそろえない。
極度の恥ずかしがり屋なのかなと思っていた・・・。
うちに来た時は、娘といつもゲームをしている。
この辺りでは、よそのおうちに行く時には、
100円くらいの袋菓子を持たせるのだけれど、
それもない。まあ、それはいいとして。
そして、お約束には必ず、妹が無言でついてくる。
それをかえでちゃんが、いまいましそうに見るのだけれど・・・・
妹は必ず、うちにやって来るのだ。
しかも無言で。
妹もめったに言葉を発しない。
うちに来て何をするのかと言えば、
ただひたすらおやつを食べているのだ。
多分、塚田姉妹の母は娘たちの行動は知らないだろうと思われる。
まあ、いい。
そんなことをいちいち気にする自分が、すごくけちなのかと
思えてくる。
自分は何て心の狭い人間なのだろうと
悲しい気持ちになる。
しかし・・・・真夏に真冬のフリースを着てきたり、
参観日の日に、片方ずつ違う靴下を履いていたり・・・・
大きすぎる服を着ている姿を見ると・・・・
何ともいえない気持ちになる。
母親は参観日には決して来ない。
私はかえでちゃんのそのことを薄気味悪いと言っているのではない。
彼女の瞳が怖いのだ。
何か得体の知れない・・・・悲しみ?憎しみ?嫉みのような
物を感じるのである。
娘とかえでちゃんは3年間ずっと同じクラスになっている。
☆
去年のことだった。
ある日娘のランドセルを何気なく見たら、
小さい手紙が入っていた。
その中には
「バカ ブス アホ」と書かれていた。
一瞬ぎょっとして、これは私が見てはいけないものだった・・・・とそっと
元に戻し、娘が何か言ってくれるのを待った。
すると、娘はしばらくして・・・・
「ママ、今日なこんな手紙が机に入っててん。」と言って紙を差し出した。
「うーーん、ひどいねえ。それで、あんたはどうして欲しいん?」
と聞くと、しばらく考えてから
「先生に見せてもいいけど、クラス全員の前で騒ぎにするのは
やめて欲しい」と言った。
私は、先生に手紙を書き、犯人は追求しなくてもいい・・・
先生の指導にお任せするので、話を聞いてやって欲しい。
手紙を書いた子はきっと心に問題があるのかもしれないから・・・
例えば、寂しさ、もしかすると、嫉妬もあるかもしれない・・・と言った。
すぐに担任から電話がかかって来たので、そう伝えた。
娘の話をいろいろ聞いて、もう私の中では
その手紙を書いた子はわかっていたのだ。
そう・・・・かえでちゃんだった。
確信した。
しばらくしてまた担任から電話があった。
先生もそのノートの切れ端らしき紙から
ほぼ書いた子を特定できたので話を聞こうとしたら
号泣しだして、話を聞けなかった。
でも、間違いないと思われる。
お母さんのおっしゃる通りです・・・・と。
(なに・・・?泣いたから話を聞かなかったの?それで、なんで
その子がそれを書いたか、本当の理由がわかったんかい?)
私は言葉を飲み込んだ。
娘ともいろいろ話し合って、なんとか道徳的にいや、理想的に・・・・
教育的に・・・・模範的に・・・・
話をまとめた。
(本当はかなり腹が立ったけどね)
だって、塚田さん・・・・娘が何してるか・・・あなたは
全く知らないわけでしょ?
かえでちゃん・・・・寂しいんだよーーー。
でも、担任は親には何も話してないと思う。
ちゃんと話せよ。
☆
こうして、塚田姉妹は何事もなかったようにうちに来る。
私は、挨拶くらいしてもいいのに・・・と思う。
そして、いつか彼女たちが気付いてくれたらいいのにと思う。
何に?
何やろ。
挨拶?
うん・・・それもある。
挨拶、大事やで。
靴そろえること?
うん・・・まあ、それもある。
よその家では靴そろえてもバチは当たらへん。
顔見て話すこと?
もちろん・・・・よそ見て薄ら笑いしてても気持ち悪いだけ。
話かけられたら、返事くらいしろ。
あまり大金、持ち歩かないこと。大きい子にカツアゲされちゃうぞ。
可愛い妹に自分の宿題、させないこと・・・・。
虫歯の治療すること。
☆
あはははは・・・・自分で書いてて可笑しいわ。
結局、私がちっちゃい人間ってことですかいな。
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