カテゴリー「月の雫」の記事

美月10代の頃からの作品

月の雫 最終回

 親父からあっさりOKが出たので、俺は急いで部屋に戻った。
シノンにそのことを伝えると、少し驚いた様子だったが・・・とても喜んでくれた。

「じゃあ、今日はもう寝よか」
「そうだね」俺たちは布団を敷き、シノンには俺のベッドを使うように言った。

「ベッド、使ってよ」
「ありがと・・・・おやすみ」

部屋の電気を消して、寝ようとしたけどなかなか寝付くことが出来なかった。
静かに時間だけが流れていった。シノンも寝ているのかどうなのかわからない。

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月の雫 第5章 8・決心

「んんっ・・・カオルっ?」
さすがにシノンも驚いたようだった。
でも俺はそのままシノンを離さなかった。

離したくなかった。出来ればずっと。

もうすぐここからいなくなってしまう・・・可愛いもの。
大切なもの。

そして・・・大好きなもの。

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月の雫 第5章 7・君を抱きしめたい

「シノン・・・・こっち来いよ」
さっきからずっとベランダで川面を眺めているシノンを呼んだ。
体には毛布を巻いている・・・・。それでも1月の夜の気温は0度に近い。

シノンの体は冷えているに違いない。俺は佐波さんの帰った静かな台所で日本茶を淹れて二階に上がってきた。親父はすでに自分の書斎にこもって、仕事を始めていた。家の中はとても静かだった。

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月の雫 第5章 6・瞳をそらさずに

自転車をビュンビュンこいだので・・・・5分ほどで家に着いてしまった。

「ありがと・・・カオル」
「・・・・・」

玄関を開けると・・・中からいい匂いがして来た。すでに料理はだいぶ出来てるんだろうなあ。・・・多分佐波さんが主導権を握って・・・。

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月の雫 第5章 5・ほんのひと時

シノンだ。シノンが歩いている・・・・。
俺は無意識のうちに顔がニヤけていることには気付いていなかった。
自転車を押しながら、そーっと後をついていった。外は次第に暗くなってきた。商店街のアーケードに灯りがともる。

シノンは商店街にある小さな花屋の前で立ち止まった。
かがんで、店の表にある小さな花束を熱心に見たりしている。
それから、その中から花束を一つつまんで、店の奥に入って行った。


シノンが店から出て来たので、俺は咄嗟に自転車ごと電柱の影に隠れた。

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月の雫 第5章 4・心に吹く風

「親父、佐波さんが来てくれはったぞ」
親父はと言うと・・・まだ台所でごそごそ鍋を探したり、道具を探しているようだった。

佐波さんの重たい荷物を台所に持ってく。
「親父・・・これ、佐波さんからだよ。牡蠣だって。それから・・・他にも・・・」
「あ、エビとホタテと・・・・イカもありますよ」
佐波さんが言った。

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月の雫 第5章 3・こんな親父

 翌日。学校から戻ると親父がいた。時計を見ると、4時半を過ぎたところだった。
「ただいま」
「おう、薫、おかえり。お前の帰りを待ってたぞ」親父は白いエプロンをつけて、台所で何やらごそごそしていた。

「親父・・・そのエプロンどうしたの?」
「あこれ?似合うやろ。前に学生からプレゼントされたんや。
仕舞いこんでたのすっかり忘れてたんや。・・ふふふん」
親父はすごく得意そうに笑った。学生からもらったって・・。罰ゲームの景品か。真っ白のエプロンにフリルがぐるっとついている。髭面のおじさんがそんなものしていたら誰が見てもおかしいだろ。

「そんなん見たら佐波さんもシノンもびっくりするで」
「ああ、佐波さんは絶対大丈夫。シノン君にはこの際慣れてもらおう。
・・・はよお前も手伝えよ」
「おお。じゃあ着替えて来るわ」ここはもう軽く流した。

乙女チックおやじ。・・・・どう?

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月の雫 第5章 2・佐波さんとシノン

 家に戻ると佐波さん(俺のもうひとりの祖母)が来ていた。そうか、今日は佐波さんが来てくれる日だったっけ。

「おかえりなさい、ぼっちゃん」佐波さんは今までと全く変わらずに俺に接してくれていた。男所帯のわが家を今まで通り、ピカピカにして、美味しいご飯を準備して・・・家政婦として働いてくれていた。

「ただいまぁ」

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月の雫 第5章 1・青天の霹靂

 年が明けて3学期が始まった。

福井から帰った俺たちは普通に年越しをして、また以前と何も変わらず、学校に通っていた。福井でのあの日。朝食の時コトが何故あんなに怒っていたのか・・・その理由は後になってわかった。でもそれよりも俺にとってはもっとビックリするようなことが起きていた。まさに青天の霹靂とはこのことだった。

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月の雫 第4章・29 素晴らしい朝食。でも・・・

「えっ?そうなん?」俺はちょっと驚いた。コトが知ってたなんて・・。それにこういう態度はなんかコトらしくないと感じた。

「あのさ・・私、こないだカオルに「ほっといてくれ」って言われた時、めっちゃショックやってんけどでも確かにあれは自分が悪かったかなと・・・それなりに反省はしてん。あの後、いろいろ考えて・・・」コトは続けた。

「そしたら、ホンマにたまたまやねんけど・・・。お母ちゃんに買い物頼まれて納屋町の着物屋さんに行ってん。そこでポスターを見て・・・これ、絶対薫やってわかった。そっからやねん。・・・・・謎が少し解けた・・・ってなんか探偵さんみたいやけど」コトの笑顔が心なしか寂しそうに見えた。

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